コラム
有力馬が次々離脱…宝塚の主役は誰だ!? 連覇狙うゴールドシップを指名
【写真】2013年宝塚記念 最終コーナーでジェンティルドンナ(左)、フェノーメノ(右)と競り合うゴールドシップ(中央)。
4歳牡馬のツートップ・キズナ、エピファネイア。天皇賞馬・フェノーメノの離脱で当初よりもメンバーが手薄になった感も否めない今年の宝塚記念(6月29日、阪神競馬場2200m芝)。安田記念で3つ目のGI制覇を達成した世界のジャスタウェイも道悪の激走だったことから出走は見送られた。そうなると、以前から宝塚記念を目標とし、順調に調整が進められている馬が春のグランプリホースの最右翼となる。その筆頭は宝塚記念連覇を狙うゴールドシップだ。
ゴールドシップは昨年の宝塚記念制覇後、2013年の秋シーズンは不振に喘ぎ、本来の強い彼の姿は影を潜めたが、今春は阪神大賞典で見事な復活勝利。先の天皇賞(春)こそ7着に敗れはしたが、昨年も天皇賞(春)で5着に敗れた後に宝塚記念を制している。
今年も同じ様なローテーションで進み、今月4日に短期放牧から帰厩したばかりだが、調教でも元気一杯の動きを披露していた。それにゴールドシップにとって阪神コースは5戦4勝・2着1回と得意中の得意コース。唯一、阪神で敗れた一戦も2歳時のラジオNIKKEI杯で、3歳以降の4戦は全て2馬身以上の差を付けての圧勝劇が続いている。
鞍上もダービーを制して乗りに乗っている横山典弘騎手との新コンビ。残り2週間弱の調整で万全な状態まで引き上げられれば不動の大本命となり得るだろう。
ドバイシーマクラシック制覇後、国内初お披露目となるジェンティルドンナの走りにも期待が集まる。
今季は京都記念でまさかの6着に敗れ、ピークを越えてしまったのではとの声も上がっていたが、前走のドバイシーマクラシックでは鞍上のムーア騎手の剛腕にも助けられて力強く勝利。まだまだ女王健在というところを見せつけた。ドバイから帰国後は放牧に出されて英気を養っていた。ドバイ後から早々と宝塚記念を目標にしていただけに、仕上がりに関しては問題なさそうだが、ジェンティルドンナ陣営にとって嫌なデータも少々……。
ここ近年の宝塚記念ではレース間隔が約3カ月以上開いた馬の勝利がないのだ(3着まで)。あのシンボリクリスエスでさえ5着が精一杯。昨年はジェンティルドンナ自身も今回と同じローテーションで3着だった。そんなジンクスを払拭できるのかに注目したい。
またジェンティルドンナの話題が上がると必ずと言ってもいいほど、ジョッキーが誰になるかということにも注目が集まる。今回は川田騎手が手綱を取ることになるが、2012年のオークスでもこのコンビで優勝している。川田自身も今春はハープスター、トゥザワールドに騎乗して、さらなる経験値を積んだこともあり、特に不安視する必要もなさそう。
7度のGI挑戦で2着が4回と善戦マンのイメージが定着してしまったウインバリアシオンも注目の一頭。骨折により約1年5カ月の休養生活を経て復帰となった昨秋から前走の天皇賞(春)まで4戦して3着以下はなし。完全復活していると見て間違いはない。
激しいレースだった天皇賞(春)2着後は放牧に出されて状態回復に努め、問題なしとされて出走が決定。悲願のGI取りに挑むこととなった。かつて善戦マンと呼ばれたメイショウドトウが宝塚記念で悲願のGI馬となったように、ウインバリアシオンもここで大仕事を成し遂げて頂点を極めてもらいたいところだ。
(text by kazuhiro kuramoto)
⇒現役のスターホース、往年の名馬の完全オリジナルグッズ販売中!!
- 2014.06.17
- 12:42
DERBY COLLECTION ~ダービーコレクション~
3歳馬による一生に一度の晴れ舞台、日本ダービーは毎年、数々の人馬のドラマ、名勝負、名シーンを生み出してきました。競馬ファンひとり、ひとりの心の中にはきっと“自分だけの特別なダービー馬”がいることでしょう。
Sports Memorial Lab. (スポーツメモリアルラボ)では過去10年のダービー馬全10頭をフォトフレームとして販売中! 各商品にはそれぞれ当時の回顧文が掲載され、こちらではその内容をご紹介します。
競馬史に燦然と輝くダービー馬、その戴冠の瞬間を振り返ってみてはいかがでしょうか?
第71回 キングカメハメハ
NHKマイルC→日本ダービーの変則2冠馬という新たな可能性を追い求めていた松田国英調教師。かつては同厩のクロフネ、タニノギムレットという偉大な先輩が挑戦しても成し遂げられなかった偉業をキングカメハメハが難なくやり遂げた。
デビュー3戦目の京成杯で初めて3着に敗れたキングカメハメハだったが、その後は順調に勝ち星を積み重ねていく。中山は不向きということで毎日杯→NHKマイルCというローテーションを進んだのだが、これが見事にハマってNHKマイルCを5馬身差で圧勝。その圧倒的な強さでダービーでは皐月賞組を抑えて1番人気に推され、レースでも下馬評通りの強さを見せつけた。
前半の1000mが57秒6というハイペースの中でキングカメハメハは中団からの競馬。3、4コーナーからマクル様に先団へ進出すると、後は孤独な一人旅。後ろから追い込んできたハーツクライを1馬身2分の1差抑えて優勝を飾った。それも2分23秒3は当時のコースレコード。まさに王者の走りと呼ぶに相応しいレースだった。
第72回 ディープインパクト
ここまでの4戦で度重なる衝撃的な勝利を見せてきたディープインパクトと武豊騎手。もちろん多くの競馬ファンはダービーでも彼の規格外のパフォーマンスを期待し、単勝支持率は歴代最高の73.4%となった。
レースではスタートから後方集団に位置取りし、淀みないペースの中を淡々と進んでいく。そして4コーナーから外を回って無難に直線コースに入ったが、この時点で東京競馬場に詰めかけた14万人を越す大観衆のほとんどが彼の勝利を確信したという。直線では残り200mで前を行くインティライミを交わすと、後はファンの大歓声に応えるように馬場の外を独走。最後は2着のインティライミに楽々と5馬身差を付けて圧勝。史上6頭目となる無敗の2冠馬誕生に府中の杜は大いに沸き上がった。
また、レース後に「感動しながら馬を追ったのは初めて」と言う武豊騎手のコメントが何とも印象的であり、この馬を称える最高の誉め言葉でもあった。
第73回 メイショウサムソン
2歳にして中央の5つの競馬場でレースを経験してきたメイショウサムソン。それも小倉デビューから地味なローテーションを進んできたこともあり、2歳時はこの馬がダービーを制すなどとは誰も思わなかった。
そんな彼の素質が徐々に花開きだしたのは3歳に入ってから。スプリングS、皐月賞と連勝。3歳牡馬クラシックの最初のタイトルを手にすると、一躍世代のトップに躍り出た。
こうなるとダービーでは堂々の1番人気の支持を受ける。レースでは逃げるアドマイヤメインを視界に捕えられる先行集団に位置取り。いつでも仕掛けられる状態で最後の直線に突入すると、徐々に加速していく。そしてゴール直前で逃げ粘るアドマイヤメインを交わし、最後は僅かクビ差でのダービー制覇となった。
また、小倉デビュー組では初のダービー優勝。鞍上の石橋守騎手にとっては苦節22年目で遂にダービージョッキーの称号を手にした瞬間だった。
第74回 ウオッカ
“牝馬によるダービー挑戦”それだけで無謀と蔑まれ、ましてや勝利などありえないと言われたが、それは競馬ファンの固定観念に他ならない。それを証明したのが第74代ダービー馬である女傑・ウオッカだ。
2歳女王の座を射止めた彼女は3歳シーズンになるとチューリップ賞、桜花賞と3歳牝馬の王道を進むことになる。この時点から既にダービー挑戦のプランも挙がっていたが、桜花賞で後に終生のライバルとなるダイワスカーレットに敗れたことから陣営は進路を白紙に戻すことを考えた。しかし、オーナーと調教師の協議の末にダービー挑戦を決行。そして、この決断が後の競馬界の歴史を大きく動かすこととなる。
ダービーでは3番人気に推されたウオッカ。道中は中団からレースを進め、上手く脚を溜めると、直線ではその豪脚が一気に爆発。前を行くアサクサキングスを楽に捕えて一気にゴール板を通過していった。牝馬によるダービー挑戦は11年ぶりで、ダービー制覇は74回の歴史上で3頭目の快挙。記録にも記憶にも残るダービー馬誕生となった。
第75回 ディープスカイ
2歳秋にデビューしてから初勝利まで何と6戦も要し、さらには初重賞制覇となった毎日杯までの9戦で騎乗したジョッキーは7人。勝ち切れず、主戦ジョッキーも定まらない状況が続いていたが、そんな彼を見事、ダービー馬へと導いたのは後の主戦ジョッキー・四位洋文騎手との出会いだった。
四位騎手が初めて手綱を取った毎日杯で圧勝劇を見せると、NHKマイルCでも末脚を爆発させて堂々の勝利。この後は休養のプランもあったが、四位騎手の強いプッシュでダービーへの出走が決まる。そんな中、ダービーでは皐月賞馬・キャプテントゥーレが不在ということもあって、ディープスカイが1番人気に推された。
レースではいつもと変わらない後方からの競馬を敢行。直線での末脚に賭けた。そして直線を迎えると馬場の大外に持ち出して猛スパート。前を行く面々を瞬く間に交わし、最後はスマイルジャックを捕えて先頭でゴール板を駆け抜けた。この勝利で四位騎手は2年連続のダービー制覇となった。
第76回 ロジユニヴァース
7月の早い時期にデビューしたロジユニヴァース。無難に新馬戦を勝ち上がると、あれよあれよと勝利を積み重ね、無傷の4連勝で弥生賞を制覇。皐月賞では単勝1.7倍という圧倒的支持を受ける存在となっていた。しかし、皐月賞では持ち前の先行力が仇となる。ハイペースに巻き込まれて、まさかの14着。今までの連勝が幻だったかのように陣営もファンも落胆した。
しかし、これで終わることはなく、ロジユニヴァース陣営のリベンジが始まった。皐月賞から僅か1か月半の間に馬自身の状態を立て直し、大一番のダービーへ出走。この日は大雨が降りしきり、馬場状態も最悪だったが、ロジユニヴァースにとってはそれが吉と出た。ダービーでは無理に逃げることなく3番手を追走。そのまま直線へ向かうと、馬場の最内を通って一気に加速していく。最後は2着のリーチザクラウンに4馬身差を付けて快勝。見事に皐月賞のリベンジを果たした。勝った横山典弘騎手はこれが嬉しいダービー初制覇だった。
第77回 エイシンフラッシュ
黒い閃光が府中のターフを切り裂いた。上がり3ハロン32秒7というダービー史上最速の時計をマークしたのが第77代ダービー馬のエイシンフラッシュだ。
エイシンフラッシュは新馬戦こそ6着に敗れているものの、その後は堅実に勝ち上がって京成杯で重賞初制覇。春のクラシックへ向けて順調に進んでいるかに見えた。ところが皐月賞トライアルを前に熱発のアクシデント発生。ぶっつけ本番で皐月賞へ向かうことになる。その影響もあってか皐月賞では11番人気の低評価。それでも末脚を駆使して3着に食い込み、ダービーへの優先出走権を得た。
そして迎えたダービーでも穴馬的な扱いは変わらず7番人気の伏兵として扱われた。レースは前半の1000mが61秒6という超スローペースで流れていく。そして4コーナーを回って直接に入ると馬群は一丸となる。こうなってしまうと、最終的には用意ドンの瞬発力勝負になるのは必然だ。そこで内田博幸騎手が待ってましたと言わんばかりに追い出すとエイシンフラッシュは驚異的な末脚を爆発させて一気に突き抜けていった。まさに歴代最速の切れ味を持つダービー馬の誕生だった。
第78回 オルフェーヴル
史上7頭目の3冠馬であり、世界の頂に最も近づいた日本馬として、その名を世界に知らしめたオルフェーヴル。しかし、ダービー時期の彼の評価は意外にも高くはなかった。
2歳から3歳初頭にかけては勝ち切れないレースが続いていたオルフェーヴルだったが、東日本大震災以降に突如その才能が開花して4番人気の伏兵ながらも皐月賞を制覇。皐月賞の勢いをそのままにダービーへと駒を進めた。
レースは大雨が降りしきり馬場状態は最悪の不良馬場。それでもオルフェーヴルは、後方待機策という自らの競馬を貫いた。前半の1000mが62秒4というスローペースの中でも後方集団から虎視眈々と2冠目のタイトルを狙っていたオルフェーヴルは、直線に入っても馬群の中に位置していたが、池添謙一騎手のGOサインに素早く反応して馬群の壁を切り裂くと、重たい馬場などモノともせずに末脚を爆発させる。最後は追い込んできたウインバリアシオンの追撃を交わして堂々のゴール。見事に2冠制覇を達成した。
第79回 ディープブリランテ
“人馬一体のダービー制覇”まさにこのコンビのための言葉と言っても過言ではないだろう。
3歳になってから好走こそしていたが勝ち切れない競馬が続いていたディープブリランテ。その要因の一つが折り合い難だ。何とか弱点を克服しなければならなかったディープブリランテ陣営だったが、幸か不幸か主戦の岩田騎手がダービー3週前に開催されたNHKマイルCで2週間の騎乗停止に。その間は岩田騎手が付きっきりで毎日のようにディープブリランテの調教に騎乗。折り合い難の解消に努めた。その甲斐あってか、レース本番でもディープブリランテと岩田騎手のリズムは抜群。さらに直線では、一杯になってもおかしくない場面でも、岩田騎手の渾身のムチにディープブリランテ自身もシッカリと応え、フェノーメノの追撃を僅差ながらも振り切った。
勝利ジョッキーインタビューで「やっとこの馬と一つになれた気がする」と岩田騎手がコメント。ウイニングランでの男泣きでも多くのファンが心を打たれた。
第80回 キズナ
記念すべき80回目の日本ダービー。皐月賞を使わない王道から外れたローテーションでダービーへ駒を進めて来たキズナだったが、前走の京都新聞杯で見せた圧勝劇から、ここでは1番人気に推された。
最内枠ということもあり、経済コースである馬場の内ラチ沿いの後方からレースを進めるキズナと武豊騎手だったが、末脚を如何なく発揮する為に、レースが進むにつれて進路を外へ外へと持ち出して前との差を縮めていく。そして迎えた最後の直線では馬場の外へ持ち出して猛スパートを開始。残り100mで先に仕掛けたエピファネイアと並んで壮絶な叩き合いが展開される。まさに一進一退の攻防に府中の大観衆は大興奮。最後は僅かに2分の1馬身差キズナが抜け出してゴール。キズナは父・ディープインパクトに次ぐ親子2代でのダービー制覇。
武豊騎手も自身5度目のダービー制覇となったが、主戦を務めたディープインパクトの仔でのダービー制覇だっただけに、喜びもひとしおだった。
text by Kazuhiro Kuramoto
※当コラムは販売中のフォトフレーム『ダービーコレクション』全10頭分の各商品にそれぞれ掲載されています。